オーストラリアにおける労働関係裁判所“Fair Work Commission”が、 日曜・祝日に『飲食店・ホテルを含むホスピタリティ業界』、『スーパー・衣料品店・雑貨屋・薬局などを含む小売店』、『ファストフードショップ』で勤務する労働者に発生する休日手当ての賃金率を削減することを発表しました。
【引用元:”Penalty rate cuts: Workers react to Fair Work Commission’s decision” 23/02/2017 http://www.abc.net.au/news/2017-02-23/workers-have-their-say-on-penalty-rate-announcement/8296480】
【引用元:“Sunday and public holiday penalty rates will be reduced for hospitality, retail workers, Fair Work Commission rules” 24/02/2017 http://www.abc.net.au/news/2017-02-23/weekend-penalty-rates-fair-work-commission-decision/8295758】
【引用元:“Fair Work Commission slashes Sunday penalty rates, public holiday rates” http://www.afr.com/business/retail/fair-work-commission-slashes-sunday-penalty-rates-public-holiday-rates-20170222-gujbi0】
オーストラリアの休日手当てについて
この“休日手当て削減”が上記に挙げられた環境で働く人々にとってどのくらい影響があることなのか。
2017年3月現在、Fair Work Ombudsman(労働関係相談所)が定めるオーストラリアの最低賃金は時給$17.70、もしくは週38時間勤務で$672.70(税引き前)となっています。(※ただし、雇用者の年齢(16歳以下)、勤務時間帯、雇用形態などによってこの最低賃金のレートは変わります。)
この最低賃金は日本で換算すると約1526円。オーストラリアは物価の高さもさることながら、日本の最低時給より遥かに高いレートであることが窺えます。ではこのレートが今までの休日手当てのルール上だと、日曜日や祝日にはなんと2倍以上跳ね上がります。ですので、働く業種にもよりますが、おおかた日曜日や祝日に働く人々は単純計算すると1時間あたり$35稼ぐことも難しくないということになります。日本で時給3019円も貰えるパートタイムの仕事なんて存在するでしょうか?|д゚)
オーストラリア人の国民性として、『仕事がどんなに忙しくても定時には切り上げて家族や友人、恋人とのひと時を大切にする』、『休日には働くことなく十分にリラックスする』などがありますが、そういった国民が休日に働くことを選び、一生懸命働いていることに対する報酬なのでは、と日本にはないオーストラリアならではのこの賃金制度を素敵だなと感じていましたし、私も実際にオーストラリアの遊園地で働いていた時は休日手当ての恩恵を授かって生活することができていました。その休日手当てのレートが削減されてしまうなんて、これまで休日を惜しんで仕事やバイトに徹してきた人々にとって大打撃でしかないことは簡単に想像できます。
休日手当て削減の影響
オーストラリア労働組合協議会(The Australian Council of Trade Unions)によれば、今回の新しい休日手当て削減のルールが適用されれば、国内で最低所得層に分類される労働者を含む50万人の人々が年間約$6,000(約51万7500円)を失うことになると発表しています。
そもそも今回なぜFair Work Commissionをはじめ政府が大幅な休日手当の削減に踏み切ろうとしているのかというと、休日手当てに充てる賃金を減らすことによって労働者を雇う余裕を作り、日曜日の営業時間の増加をより良いサービスを提供するためだそうです。雇用率が上がれば失業者の数も減るため、長い目で見れば国全体にとって大きな利益になるでしょう。しかし、今まで効率よくお金を稼ぐために休日もわざわざ選んで働いてきた人にとって頼りにしていた休日手当てがなくなってしまうなんて、やる気を削がれてしまうのではないでしょうか。。
これは休日手当ての削減がなされた結果どのくらい時給が減ってしまうのかを表した図です。
赤い矢印の先にある数字が削減後の時給を表しているのですが、ルールが改正されることで1時間あたりの賃金が大幅に減らされてしまうことがわかります。
労働者のリアルな声
ルール改正に関するニュースが報道されてから町中のカフェやスーパーなどで働く学生を中心とした労働者は怒り心頭。今回引用したABCニュースにもたくさんの休日労働者達がそれぞれの思いをぶつけています。
“I work at this cafe part-time to make some extra money while I study mental health, so cutting these Sunday rates sucks. How are employers supposed to retain staff without these incentives? I don’t think the politicians have really thought this decision through. We have such good working conditions in Australia, it seems a shame to start getting rid of them. I will still have to work Sundays regardless, so it will mean I have to work harder for less, which is unfair.”
(私は精神衛生について学びながらこのカフェでパートタイムで休日に働き、少し多めに稼いでいます。なので、日曜日の休日手当てのレートが下がるなんてやってられません。雇用主はこれからどうやって休日手当てのようなご褒美なしにこれまで通り休日にスタッフを働かせようとするんでしょうか。政府はちゃんとした考えがあって今回の決断をしたとは思えません。オーストラリアの労働条件は恵まれている方なので、休日手当ての削減をするということは残念でなりません。どんな理由にしろ、私はこれからも日曜日が出勤日なので、休日手当てが削減されてしまうのであれば、この先少ない取り分の為に一生懸命働かなければならないということになります。これって不平等ですよね。)
おわりに
ルール改正について、祝日における手当て削減は今年の7月1日以降、そして日曜日の手当て削減に関しては見通しがたっていないそうです。削減に対する世論次第では改正事態が先延ばしになるかもしれませんし、まだこれからも目が離せないニュースであることは間違いありません。
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