去年、ラグビーワールドカップがイギリスで開催され、日本チームが優勝候補の南アフリカを下したことでさまざまなメディアで取り上げられましたね。皆さんはテレビで見ましたか?
最後まで粘って粘って勝ち取った勝利は「ラグビーワールドカップ史上最高の試合だった」と賞されるなど世界中のメディアが大絶賛しました。
そんな数あるラグビーチームのなかで世界最強と称されているのがニュージーランドの代表チーム「オールブラックス」です。2016年9月現在、オールブラックスは公式戦で43連勝、最後に負けたのは2009年という信じられない強さを誇っています。
ところでオールブラックスと言えば、試合前に踊る「ハカ」という踊りが有名です。実はこのハカ、オールブラックスの試合だけで踊る踊りではありません。
今回はオールブラックスが踊るハカはもちろんのこと、ハカにまつわるお話です。
ハカはニュージーランド先住民マオリ族の踊り
「ハカ」はニュージーランドの先住民マオリ族の踊りです。
その昔、マオリ族は部族同士の衝突が多く、「戦闘民族」と呼ばれるほど常に争いが絶えませんでした。そんな戦闘民族は部族間の争いが起きたとき、先頭に立つ戦士たちは自分たちの強さを相手に見せつけ威嚇するために大きく目を見開き、舌を前に突き出したり、唸ったり叫んだり、さらに手や足などを使って大きな音を立てたりしました。
また同時にハカを踊ることはマオリ族の神を自分たちに降臨させ、戦いを勝利に導くための儀式のような役割も果たしていました。
その踊りが後にニュージーランドのラグビー代表チームのオールブラックスが踊るハカの原形になりました。
闘志を鼓舞するオールブラックスの「ハカ」
オールブラックスのハカの映像を用意しましたので、まずはどんなものかご覧ください。
いかがでしたか?大きな声をあげ、手を振り足を踏み鳴らす姿は荒々しさを感じますね。
ハカは相手チームの選手を威嚇するのはもちろん、仲間チームの闘志を鼓舞させ試合に集中させるために踊られています。
試合前に踊られるハカには今回紹介した「Ka Mate カ・マテ」のほかに、「Kapa O Pango カパ・オ・パンゴ」と呼ばれるハカもあります。
歌はどちらもマオリ族の言葉マオリ語で歌われており、カ・マテの歌詞はこのようになっています。
死ぬかもしれない、生きるかもしれない。太陽を輝かせた毛むくじゃらの男が上がってくる。また上がってくる。太陽が輝く。
この歌詞だけを見ると意味がよくわかりませんね。
それもそのはずです。ラグビーで使われているのは歌でいうサビの部分だけなので、切り抜かれた歌詞では意味がわからなくてもしかたありません。
ちなみにハカは、ニュージーランドの代表チームがまだオールブラックスと呼ばれる前の1800年代後半から試合前に踊られていました。ところでニュージーランドの代表チームがオールブラックスと呼ばれるようになったのは1905年といわれています。
ハカは荒々しいものだけはありません
もともと相手を威嚇するための踊りだったハカは時代とともに少しずつ変化し、部族のなかに客人を迎え入れるための歓迎のハカや、功績を称えるハカ、ほかにも結婚式や葬式など特別な行事、さらに日常的なちょっとしたイベントでもハカは踊られるようになりました。
また、日本の合唱コンクールのようにニュージーランド国内でハカのコンテストが毎年行われ、全国からたくさんの団体が出場ししのぎを削っています。
この動画で歌い踊られるハカはオールブラックスが踊るハカとはまったく違うものですね。もっと女性的で動きも優雅です。どこかハワイのフラダンスとも通じる動きをしています。
その他、公式の場でハカを見かけることもあります。
各国の首脳陣や著名人がニュージーランドを訪れた際、空港などで歓迎のハカが踊られたり、日本の建国記念日にあたるWaitangi Dayはイギリス人とマオリ族が手を結んだ日としてニュージーランドの各地でイベントが開かれ、その会場ではハカが踊られます。
そして以前、ニュージーランドの男子校で踊られたハカが世界中のメディアで取り上げられ、世界中を感動の渦に巻き込むことになりました。
世界が感動!亡くなった人を偲(しの)ぶ追悼のハカ
2015年7月、ニュージーランドの北島にあるパーマストン・ノース(Palmerston North)という街にある男子校で30年教鞭を取っていた先生がなくなりました。
その先生は生徒たちから非常に人気があり、とても慕われていたため生徒たちは落胆の色を隠せませんでした。そこで学校で追悼式が行われることとなり、学校の入り口で待っていた全校生徒1700人が霊柩車の足を止めて「追悼のハカ」を踊ります。
このハカを紹介した動画はたった4日で250万回再生され、その後890万回も再生されることになります。
荒々しさの中に生徒たちの落胆が見え「戦士が悲しみを堪え震えている姿」を見て取ることができます。
ハカから感じる民族大移動の軌跡
ところで少し話は変わりますが、人類は南アフリカで誕生し、その後ヨーロッパやアジア、オセアニア、アメリカ大陸へと長い年月をかけて大移動をしたという説がありますね。
その証拠の1つに挙げられるのがマオリ族を含む南太平洋の島々に住む人たちの踊りです。
南太平洋の人たちはマオリ族のハカと同じように仲間の闘志をかき立てたり、相手を威嚇するための踊りを踊ります。例えばサモアの人たちは「シバタウ」という踊りを、そしてトンガの人たちは「シピタウ」フィージーの人たちは「シンピ」、さらにハワイの人たちは「ハアコア」という踊りを踊ります。
これらの踊りは共通点が非常に多く、見比べてみるとすごくよく似ています。
以前、ニュージーランドの代表チームオールブラックスと、サモアの代表チームがラグビーの試合をしたとき、試合前に「ニュージーランドのハカ vsサモアの シバタウ」という踊り対決になったことがありました。
2つの踊りがすごく似ていることがわかる動画がありますので、ぜひご覧ください。
最初に踊られるのがニュージーランドのハカ、そして次に踊られるのがサモアの「シバタウ」です。
多少のメロディーは違いますが、掛け声のかけ方や動きがよく似ていますね。
マオリ族を含め、南太平洋の人たちは文字を持たない文化でした。
そのため長い年月をかけて広い海を渡りながら、彼らは踊りという形で自分たちの文化を後世に継承してきました。そう思うといろいろ感慨深いものがありますね。
最後に
いかがだったでしょうか。
今まで「ハカ=荒々しいもの」だと思っていた方はイメージが大きく変わったのではないでしょうか。
最後にニュージーランドでハカを見ることができるところを紹介します。
ニュージーランドでハカを見る場合、オークランドやウェリントン、クライストチャーチなどの大都市の場合はホテルでマオリのディナーショーが行われていますが、個人的にはぜひ「温泉の街」として、また「マオリ族の街」として有名なロトルアに訪れて、本格的なハカを見ることをお勧めします。
ロトルアには、Tamaki Maori Villageをはじめとしたマオリの文化を体験できる施設がいくつもあります。Tamaki Maori Villageではマオリ族の踊りはもちろんマオリ族の食事「ハンギ」を食べたり、踊り以外のさまざまなマオリ文化に触れることができます。
Tamaki Maori Village
http://www.tamakimaorivillage.co.nz
220 Hinemaru Street, Rotorua, New Zealand
その他、街の中心にあるインフォメーションセンターi-Siteに訪れると、ロトルアでどんなマオリの体験ができるか詳しい説明を説明してもらったり、予約をすることができますのでぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。
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