Photo credit: kelvinhu via Visual Hunt / CC BY-NC
今回は、世界的にも有名な夫婦である、元サッカー選手のデビット・ベッカム (David Beckham)さんの英語とその奥様であるビクトリア・ベッカム (Victoria Beckham)さんの英語に着目をしてみたいと思います。まず、簡単にDavid Beckhamさんの紹介をします。彼は、1975年、ロンドン北東部に位置する下町レイトンストーン(Leytonstone)に長男として産まれました。後に一家はさらに北に位置するチングフォード (Chingford)に引っ越し、彼はここで少年時代を過ごしました。私生活では、1999年に元スパイス・ガールズ (Spice Girls)のVictoria Beckhamさんと結婚しました。後半で、彼女の英語も少し紹介したいと思います。
デイビッド・ベッカムの英語を聞いてみよう!
1994年のデイビッド・ベッカムのインタビュー
まず、このインタビューを見てください。
これは、1994年の彼が18歳の時の映像です。どんな印象を抱かれますか?すぐに気付く特徴として以下のものがあります。
① あまり口を大きく開けない。
あまり口を開かずに話す上、唇の右側を比較的上げて話していることに気付かれるかと思います。口の動きが見えにくいというのはリスニングを難しくさせますね。
② “like”の発音
Filler (フィラー;つなぎ言葉)として用いる“like”の発音ですが、通常 /láɪk/ と発音するところ、 /láɪ/ と発音しています。最後の母音の/ɪ/もほとんど聞こえません。これは、「声門破裂音」 (glottalization)と呼ばれ、彼が当時話していたコックニーアクセント (Cockney)の大きな特徴と言えます。
同様の現象は、“butter”を /bˈʌṭɚ/ ではなく、/ˈbʌtə/と発音したり、“light”を /láɪt/ ではなく、 /láɪ/ と発音します。つまり、“like”と“light”はほとんど同じように聞こえてしまうことになります。
③ “about”の発音
標準的なアメリカ英語ですと /əbáʊt/ と発音されますが、ここでは、/əbˈəh/ のように読まれています。
④ “H”の発音
音声学的には“H-dropping”と呼ばれるものですが、“him”を /hɪm/ ではなく、/ɪm/ のように、Hの発音を落として発音しています。
2010年のデイビッド・ベッカムのトークショー
次に、このトークショーを見てください。
これは彼が35歳の2010年7月にFriday Night with Jonathan Rossというイギリスのトーク番組に出た時の映像です。まず、簡単に気付く特徴として以下の点があります。
① 口を開ける。
18歳の時に比べ、口を開けて発音しているのと、以前に見られた唇の使い方は改善され、聞きやすくなってきています。
② “You know”の多用。
これも、先ほどの“like”と同じfiller で、他には“Well”や“Uh”などがあげられますが、当時の彼が話す際、特にこの“you know”を使うことが多いです。これは、日本語の「なんか」という単語に似ていて、意味もなく話す際に挿入してしまう(fill)特徴があります。
また、同じインタビューの“you know”の発言の部分だけを切り取った映像もあります。(https://www.youtube.com/watch?v=607Gqp-_I2U)
こうしてみると、彼の口癖が見えてきますね。
③ “H”の発音
先ほどと同じく、H-droppingが起き、“here”が /híə/ ではなく、/ɪə/ と発音され、“ear”と同じように聞こえます。
2016年のデイビッド・ベッカムのインタビュー
最後に2016年のインタビュー映像です。
これは、アメリカの朝の情報番組でのものですが、だいぶcockneyのアクセントが抜け、アメリカ英語に近くなり、聞き取りやすくなっている印象を抱かれるでしょうか?特徴をあげてみます。
① “about”の母音
以前の“about”の発音が /əbáʊt/、“proud”も /práʊd/ というようにdiphthong (二重母音)を使って発音しています。
② 最後の子音の音
単語の最後にある /t/ や /d/ の音もしっかりと発音しています。
③ “th”の発音
何度か出てくる“something”という単語のthの音は、以前は /f/ や /t/ の音に近かったのですが、しっかりと /ɵ/ の音で読まれています。
④ “H”の発音
H-droppingの特徴がなくなり、“here”は /híə/ とhの音を伴っています。
最後に、余談ですが、口癖であった“you know”は消えていますね。
ビクトリア・ベッカムの英語を聞いてみよう!
次に、奥様でいらっしゃるVictoria Beckhamさんの話し方も見てみましょう。まず、彼女の紹介をします。
1974年にイギリス・エセックス州(Essex)で産まれ、高級住宅地であるハートフォードシャー(Hertfordshire)で育ちました。先にも書いた通り、Spice Girlsというグループのメンバーで当時の相性は“Posh Spice”(poshは「上品な、おしゃれな」という意味ですが、グループのメンバー当時はあまり笑顔を見せず、気取ったイメージであったことから、少し皮肉を込めて)の愛称で呼ばれていました。
1997年のビクトリア・ベッカムのインタビュー
まず、この映像を見てください。
これは、彼らが結婚する前の1997年、まだSpice Girlsというグループに居たときの映像です。どんな印象を抱かれますか?
この時は、“all”を/ˈɔːl/ではなく、/ˈɔːw/のように発音するなど、出身地のEssexのアクセントが感じられます。次に、“here”もアメリカ式の/híɚ/でもイギリス式の/híə/でもなく、/íə/のように聞こえます。
2003年のビクトリア・ベッカムのトークショー
次に、このトークショーを見てください。
これは彼女が29歳の2003年12月に先ほどのDavid Beckhamさんと同じ、Friday Night with Jonathan Rossというイギリスのトーク番組に出た時の映像です。イギリス英語の特徴は残していますが、“whole”を/hˈəʊl/と最後の /l/ を発音したりするなど、Essex英語の特徴が次第に抜けてきています。
2015年のビクトリア・ベッカムのインタビュー
最後にこのインタビューを見てください。
これは、2015年のインタビューですが、どんな印象を抱かれますか?すぐに気付く特徴として、まず、上記2つと異なり、笑顔が少ないので、少しぶっきらぼうに聞こえるかと思います。(インタビュー中に、“Smile or pout?”と尋ねられて、“smile”と答えているのも少し皮肉っぽく聞こえ、面白いところですが。)
ただ、紹介したものの中では、もっとも一つ一つの単語をハッキリと発音し、Essex英語の特徴は消え、彼女のニックネーム通り“posh”な英語になっています。
さいごに
いかがだったでしょうか。夫妻共に、ファッションやその言動に注目を多く集めてしまいますが、こうして昔の映像と比較してみると、二人とも元々の英語の特徴が薄れてきていることが感じられると思います。通常、思春期を過ぎると、人の話し方は確立すると考えられていますが、人は環境や話す相手によって、よりハッキリと発音をしたり、聞き取りやすいように話し方を変えることが垣間見られる好例だと思います。
様々なメディアに登場する二人ですから、是非彼らの英語の発音にも目を向けて聞いてみてはいかがでしょうか。
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