皆さんは「言語学」という分野はご存知ですか?大学に「言語学部」や「言語学科」という専門分野はあるものの、日本では注目を集めたりせずあまり人気のある分野ではないように思えます。言語学は読んで字の如く、「言語」の研究、及びに「言語の使われ方」、「言語と体のメカニズム」など、人間が言葉を話す仕組みや学ぶ仕組みなどを研究する分野です。言葉で説明すると複雑で実際勉強していてもすごく難しい分野ではありますが、言語学の研究はどうしたら外国語を習得できるのか、なぜ外国語を習得することが難しいのかをたくさんの理論とともに論理的に教えてくれるので、英語に限らず外国語を学ぶ私たちにとってとても意味のある分野だと思います。
そのわりに日本ではなので今回はこの言語学という分野から、「第二言語習得論」というトピックに注目し、Lightbown, P、Spada, N共著のチャプター「Explaining Second Language Learning」で説明されている様々な第二言語習得の理論から私が選んだものを複数の記事にわたっていくつかご紹介し、日本人にとって効果的な第二言語習得法について書いていきたいと思います。
【日本人は外国語を学ぶ環境に恵まれている。】
堅苦しい理論を説明する前に。皆さんは一度でも「何で英語なんか勉強しなければいけないんだ!」「英語なんかずっと日本で生活していくのであれば必要ない!」と思ったことはありませんか?私も現在オーストラリアの大学に通っている身ではありますが、課題がなかなかはかどらない時、「自分はどうして少しでも英語に興味を持ってしまったのだろう。。」と自分の境地を哀れむことがあります(笑)。
しかし、オーストラリアでできたオーストラリア人をはじめ、イギリス人など、英語圏出身の友達に言われることは「外国語を積極的に学ぶ環境に生まれたなんてすごく羨ましい!」。初めて言われたときに「何で?英語を初めから話せることのほうが羨ましいよ。。」と思いましたが、冷静に考えたときに、英語圏で生まれた人は自分の母国語がすでに世界言語と言われるほどにパワーを持つ言語であるために、「他の言語を無理に習得する必要がない」のです。つまり、「外国語を学ぶ必要性がそこまでない」ため、学ぶ場所や機会が少ないのです。なので、英語圏に生まれ育った人達から見た私たちは英語の流暢さはともかくとして、早いうちから外国語を学ぶという点で恵まれているのかもしれません。
【インプット/アウトプット仮説】
それではここから第二言語習得において多くの学識者によってたてられた仮説についてご紹介していきます。1970年代に言語学者Krashenによって提唱された「インプット仮説」は、言語を学習している人々は「自分たちが理解できるレベル、またはその少し上のレベルの単語や文法などを知覚すること、またその量」が言語習得に最も影響を及ぼすと仮定したものです。つまり、英語を多読して英語に慣れようとしているとき、まだわからない英語の単語や文の構造ばかり使われている英字新聞を読むより、自分のレベルにそった小説や教科書を読むことの方が理解を深め、言語の習得に効果があるということになります。また、インプット仮説においては「読んだり聞いたりして理解を深めた情報を、話したり書いたりして表現するアクションは理解を深めることには繋がらない」としています。
反対に、Swainが提唱するアウトプット仮説において第二言語学習は「学習者が自分の知識や理解がネイティヴスピーカーに比べて劣っているということを知ること、また、どれだけ劣っているかの差を知ること」が学習者を学ぶという意識に導くととともに、取り入れた知識の理解を深めるとしています。例えば、常日頃英字新聞を読んだり、座学で文法や英文をたくさん書いていて英語を学習している気でいても、道端で外国人に英語を話しかけられてうまく応対することができなかったり、言葉が通じなかったという場面で「自分の英語の能力が高くない!」と気づくことが第二言語学習に大きく影響する「気づき」であるということです。また、そこに気づいてから自分の理解していたことを修正して、正しい形を知り使っていくことが言語習得に大きな意味をもたらすと言われています。
【まとめ】
「自分の身の丈にあったレベルの単語や文法、本などを読んで知識を取り入れること」が言語習得に効果的だとするインプット仮説と、「知識として取り入れたことを理解し、それらを使用する。また、使用して自分の知識・理解が不完全であることに気づくことが、自分で学んで取り入れた知識の理解をより深める」と提唱するアウトプット仮説をご紹介しました。皆さんは、「知識詰め込み型」か「知識活用型」のどちらのタイプですか?また、英語やその他の外国語の習得を効果的にするためにはどちらの仮説を支持しますか?
次回の記事では「第二言語学習者にとって対話で得られる新情報や対話相手からのフィードバックこそが知識を深める最大の要因」と提唱する「相互交流仮説」についてご紹介したいと思います。
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