『英語』が世界で最もパワフルな言語だと認識され始めてから、日本からアメリカ、イギリス、カナダなど英語圏の先進国へ『留学』をして英語を学ぶ人がここ20年で急速に増えています。日本における留学者増加の背景には、『英語=個人の特筆すべき将来に役立つスキル』という日本の中での『英語』という1つの言語があがめられていることが関連しているように感じます。その根拠として、高校・大学入試には英語が必須科目として設定されていることや就職活動の際にTOEICやIELTSのスコアの提出を義務づける企業が存在します。まさに日本における『英語帝国主義』です。
英語は日本語とは全く異なる文法を持つ言語であるため、そのような言語を日本人が習得することはかなり難しい。だからこそ、英語が随分浸透してきた現代の日本でも未だに英語を話せる人は世間ですごい!と称えられるし、企業にとってこういった『英語を習得する』ということを成し得た人材は、英語力のみならず、その頑張りを認めて内定を出すことも何となく理解できます。
でも、この考え方が海外で生活をする日本人留学生が抱える悩み・思い込みを抱く要因になってしまっているのでは・・・と思い、今回【留学生が勘違いしがちなこと・思い込みがちなこと】というコラムを立ち上げ、ここで日本人留学生が抱く『英語習得に対して抱く先入観』『留学当初悩みがちなこと』などを紹介し、同じ留学生としての私の視点から『こうやって考えてみようよ!』『そんなの悩むことじゃないよ!思い込みすぎだよ!』とお話しさせて頂きたいと思います。今回取り上げるお悩みは、【海外で日本人と共存していくこと】についてです。
英語圏で生活をしている日本人留学生がよく口にするこの悩み。自分の通う語学学校に自分以外の日本人の生徒がいたり、同じクラスに日本人生徒がいるからお互いわからない文法や内容出くわした時に日本語を使って助け合ってしまったり、せっかく海外にいるのに『英語を使う』生活から遠ざかっている気がする。。。そんなことから『周りに日本人がいること=英語力向上の妨げ』と感じてしまうのではないでしょうか。そんなあなたに考えてほしいポイント2つ。
1.単一民族国家なんて日本、中国、韓国といったアジア圏くらい。21世紀において、世界の先進国の多くは多民族国家として様々な文化・国籍を持つ人々が1つの国で共存している。日本人がいない環境で英語を学びたいならアジア人が済まないような田舎に行くべき。
2.「1ヵ月~半年程、日本語を耳にしたり話したりする機会がなければ日本語を忘れて英語が上達する」なんてことは言語学的に考えてもありえない。12歳を過ぎた人間の言語機能は、使う機会が少ないからと言って慣れ親しんだ母国語の能力を低下させる程無能ではない。
1つの国に1つの民族しか生活しないような日本みたいな国の方が珍しい
2015年に統計局が発表した調査結果によると、日本に住む日本人の割合は97.9%だそうです。オーストラリアに住んでいる私からしたら、「日本ってとんだ鎖国!」だなんて思ってしまいます。一方、オーストラリアで生活していて、オーストラリア人しか目にしない一日なんて一体あるのか、というほどオーストラリアにはたくさんのバックグラウンドを持つ人々が生活しています。日本ではなく、世界レベルで物事を考えるなら、世界の先進国(英語圏)は多民族国家、つまりその国の国籍を持っていない人々だって永住権を保持して生活しており、その割合は極めて大きい。日本のように、日本人しかいないような国のほうが先進国の中ではかえって珍しく、オーストラリアの中でも特に都市部で生活している以上、日本人がいない環境に身を置くなんて100%ありえないということは当然です。
たしかに、語学学校の同じクラスに日本人がいていつもお互い日本語で助け合うことは英語学習を始めたばかりの人におすすめできることではありません。日本人同士がいつでもどこでもお互い歩み寄ってしまっている状態なら、クラス内ではできるだけ話さないように席を離して座ったり、日本人とだけでなく周りの色んな文化や国籍を持つ生徒と接するようにしたりすることが『英語に慣れる』ことに繋がり、他人に甘える癖を取り除く良いきっかけになり得るでしょう。しかし、周りに日本人がいることに嫌悪感を抱いているのならば、都市部から遠く離れたファームなどの田舎の方で生活をすることをおすすめします。
大人の語学能力は周りの環境によって左右されるようなものではない
次に、英語力の向上の妨げ・原因が自分を取り巻く環境だと信じるあなたへ。自分が白人だらけの環境に身を置けば1年程で英語を上達させる自信があるからこそ、そのような不満を周囲に漏らしているのでしょうか?勉強って、学習者自身が頑張ることですよね・・・?
「シェアハウスの隣の部屋に住む日本人が毎晩音楽を大音量で流していて勉強に集中できない」このような状況なら、もちろんその日本人が100%悪いですし、勉強の妨げの一因として考えられます。ですが、もしあなたの身近に“日本人の存在”そのものが英語力の向上の妨げと思うのなら、それはただの甘えだと考えます。
論理的に説明するとしたら、言語学において『12歳』という年齢は外国語の習得・能力を判断するうえでボーダーとなる年齢だと言われています。つまり、『12歳までに外国に移住した子供は、もともと身についていた母国語を移住先で学び身に着けた言語の能力が上回る傾向にある』という仮説が調査結果によって有力視されています。留学生活1年あたりの人の日本語が下手になることもなければ、12歳を超える私たち大人が、たとえば身近にもしインド人がたくさんいて、インド訛りの英語を毎日耳にしていたとしても、私たちの英語がインド訛りになってしまうなんてことは滅多にないってことです。それに、周りの環境・国籍によって勉強に対するモチベーションが下がってしまうような人、自分の能力が他人によって左右されるものだと思い込んでいるようなレベルでは、英語でも何語でもいつまでたっても習得は見込めません。周りに何人がいようが勉強するのはあなた自身、身につく能力もあなた自身のもの。あなたの英語力はあなたの努力や頑張りを映す鏡なのだから、それが周りにいる日本人の数によって質が上がったり下がったりするわけなんてないのです。
留学生として心に留めておくべきこと
わざわざ自分に投資すると決めて、日本を出て留学をするということを選んだあなたが英語圏で日本人を目にしたらがっかりする気持ちは痛い程わかります。私もシドニーに初めて来た次の日、語学学校で日本人がいるのを見てとてもがっかりしました。でも、これが『世界の発達している英語圏で生活をする』ということなのです。日本で生まれ育った私たちはどうしても日本での経験を中心に物事を考えてしまう。これは責められない事実です。ただ、日本を出て生活をしている人は、少なからずその生活している国・地域の文化や習慣を理解する必要があります。それがその国に住むことを認められた人が最低限示すべき態度なのでは、と私は考えています。
海外で生活をした経験がない日本人でも日本語・英語のバイリンガル通訳士として活躍する人はたくさん存在しているのも事実。『語学習得』を単なる「話す・聞く・読む・書くスキルを身につけること」と捉えるのではなく、『その言語を扱う能力を身につけるとともに、その言語が話されている国の文化や背景を学び、身につける』ということが語学習得の本質であり、海外で生活していくうえで日本人が持つべき考え方なのではないでしょうか。
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