今回は、フィリピンの英語の特徴を紹介した後、留学先を選ぶ際のポイントについて考えてみたいと思います。
フィリピンの英語
フィリピンの公用語はピリピノ語 (Pilipino; タガログ語 (Tagalog)の公式名ですが、一般的にはタガログ語として知られているので、以下タガログ語と表記します)と英語です。また、小学校から多くの授業は英語で行われているため、一般的な感覚として、「(日本人に比べて)英語が話せる人が多い」という印象を抱かれるかと思います。
しかし、フィリピン人にとって英語とは、生まれた時から話している母語ではありません。マニラ周辺のタガログ語をはじめとして、フィリピンには170を超える数多くの現地語があります。たとえば、日本人にも人気の高いセブ島では、セブアノ語 (Cebuano)が使われていますし、フィリピン人同士の普段の会話はやはり現地語でなされています。
そんなフィリピン英語は、どちらかと言えば、アメリカ英語に近い発音・語彙を持っているとはいえ、やはり、「フィリピン英語」と言って良いような特徴がたくさんあります。今日はそんなフィリピン英語を言語学的な観点から少し紹介をした後、「留学先としてどうなのか?」という観点から考えてみたいと思います。
1. アクセント
発音面での違いも多くありますが、それ以前にアクセントの位置が異なる単語が多く存在します。以下、正しいアクセントが来る個所はイタリック体で、フィリピン人がアクセントを置く箇所を赤字で表記してみます。
innovative、story、comfortable、interesting、guitarist、January、そして、Japaneseといった具合です。
2. 発音
次に発音に目を向けてみましょう。
統治国であったスペイン(語)の影響を受けているものと考えられるものとして、Rの音が巻き舌になり、男性への呼びかけに使われる“sir”が/səː/ではなく、/sər/となったり、母音の違いが曖昧で、 “hot”と“hat”が同音に聞こえたりします。その他、面白いところでは、“iPod”と“iPad”の音が同じように聞こえるなどの特徴が挙げられます。
次に、/f/、/v/の音も正しく発音出来ない人が多く、たとえば/v/の音は/b/の音へ (なので、“very”と“berry”は同音)、/f/の音は/p/の音へ (なので、“fine”は“pine”に、“coffee”が“cop”や“copy”の音に)なります。
さらに、英語特有の音である、thも(IPAでは /θ/ または /ð/ と表記されますが)、/t/の音と、/d/の音で代用されます (ですので、“think”は/tɪŋk/、“these”は/díːz/となってしまいます)。
3. 過剰訂正
次に、言語学的にはHypercorrection (過剰訂正)と呼ばれる現象も見受けられます。たとえば、本来発音されない、combing (くし・ブラシでとかすこと)の“b”の音を発音してしまったり、逆に本来発音されるべきToronto (カナダ・オンタリオ州の州都)の最後の/oʊ/の音を消して、/tərάnt/と読んだり、“human”を“/júːmən/と読んだりします。
フィリピン英語独特の表現
次に、フィリピン英語に見られる独特の表現や言い回しをみてみましょう。
1) Comfort Room またはC.R.
– 何のことだか分かりますか?本来は、“toilet”や“washroom” (“bathroom”)と呼ばれている場所です。
2) ballpen
– これは和製英語と同じなので、分かりますね。英語ではball-point penやbiroと呼ばれます。
3) shades
– 何のことだか分かりますか?これは、sunglassesのことです。ちなみにオーストラリアでは、sunniesと言っており、“shade”と“sun”のコントラストがなんとも興味深いですね。
4) Oo /ʔʌʔoʊ/
– これは、タガログ語として使われているものですが、フィリピン人と英語で話している時にも聞かれます。この単語、実は、“Yes”の意味で用いられています。英語で、“uh-oh”や“oh-oh”と使った場合、困った事態になっていることが想定されるので、注意が必要ですね。
5) 文法に着目すると、こんな例もあります。
① -er比較級にさらにmoreをつける
e.g.) I want to study English more harder.
“much harder”とはいえても、“more harder”とは言えませんよね。
② HeとSheの使い分け
女性の話をしているのに、代名詞に“He”を使ってしまったり、またその逆もあります。これは、タガログ語の“siya”という単語が両方の性別に対しても使えることから来ています。
③ alreadyの使い方
e.g.) She went there already.
本来であれば、“She already went there.”、より正確には、“She has already gone there.”であるべきですが、alreadyの使い方・位置が変わっています。
④ 複数形に出来ないものを複数形にする
e.g.) 複数形に出来ない、furniture (家具)を“furnitures”、evidence (証拠)を“evidences”、stuff (もの)を“stuffs”としてしまいます。
⑤ I’ll go ahead.
これは混乱する表現の一つだと思います。これは、「先に行くよ」という意味ではなく、“Excuse me, I have to go / leave.” (行かなきゃ)の意味で用いられています。
⑥ I’ll pass by.
これも混乱する表現の一つです。これは、“I’ll stop by.” (立ち寄る)の意味で使っているのに、逆の意味を持つ表現になってしまっています。これもタガログ語の“Dadaan Ako”の直訳から来ています。
⑦ For a while.
最後にもうひとつ混乱する表現があります。“For a moment.” (少しの間)という意味から想像できなくもないのですが、これは、“Please wait.” (ちょっと待って)の意味で用いられています。
ここまで書いたことも含め、フィリピン系カナダ人で、歌手でもコメディアンでもある、Mikey Bustosが韓国人の友人女性にフィリピン英語の意味を当てさせる映像があります。ここでは、典型的なフィリピン英語の表現や発音を見ることが出来ます。
どんな印象でしょうか?みなさんが語学留学をして身につけたい魅力的な英語でしょうか?
理想の留学先について考える
最後に、語学留学先という観点からフィリピンという国を見てみたいと思います。英語を学ぶということを考えたとき、確かに、フィリピンは近いですし、もちろん物価も安く、明るい人が多いのが特徴です。中長期で滞在して英語を学ぼうと考えたときに、その選択肢の一つの国として名前があがるのも当然理解は出来ます。しかし、上記に記したような英語の特徴を持っている人が多いこと、日常会話レベルでの不自由はそれほどないにしても、やはり非英語母語話者 (non-native English speaker)であることは認めざるを得ない事実だと思います。
留学先を選ぶ際、まず、治安や物価、日本人の数(多さ・少なさ)を考慮する人が多いと思いますが、その国・地域でどういった英語が話されているかにも着目し、やはり英語母語話者の多い、イギリス, アメリカ, カナダ, オーストラリア, ニュージーランドといった国を選ぶのか、今回取り上げたフィリピンやシンガポールといった国を選ぶのかも考慮に入れ、より充実した留学生活を送って欲しいと思います。
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